創作シリーズ「熾火」

敗れざる者の胸奥に灯る《いのち》の灯り――。

お知らせ(24/01/08)

こんにちは。 24/01/07より、「熾火」(01)より順次noteに掲載してまいります。基本的には、毎日一回分を公開していく予定です。また、価格を設定してありますので、ご支援・応援をしていただけます方は、クリックの上で手続きを進めてくださいますと幸いで…

創作「見えない隣人~新・熾火:第五話」(01)

2019年4月に平成が終わると、5月1日から「令和」が始まった。昭和の終わりに際しての、陰鬱な自粛ムードを知っている昌行は、その朝、清々しさのようなものを感じたことに戸惑っていた。この代替わりは、時代を画するものなのだろうか。昌行はそうした疑問を…

創作「見えない隣人~新・熾火:第四話」(02)

1月14日の朝、目を覚ましためぐみの傍らには、由紀江と英、それに吉岡啓があった。 「薬を全部飲んだとしても、それで死んじゃうことはないのに」 安堵した啓がめぐみに語ったのを聞いていた英は、手をつないだまま、啓につぶやいた。 「ひらくちゃん、お母…

創作「見えない隣人~新・熾火:第四話」(01)

東日本大震災から三か月が経った2011年6月、中井由紀江に促されるようにして、須藤めぐみは「しずく」の見学に訪れた。9月には4歳になるという英(すぐる)の母のめぐみは、産後の不調が長引いたものと考えていた。 2003年に高校を卒業しためぐみは通学制の…

創作「見えない隣人~新・熾火:第三話」(05)

桐華教会の「強固な組織力」に支えられた朋友党は、結党以来、常に一定の存在感を示してきた。しかし昌行は、そのような朋友党理解を苦々しく感じていた。つまり、朋友党は一枚岩の組織政党などではない。「組織」「組織票」としてのみ朋友党が理解されてい…

創作「見えない隣人~新・熾火:第三話」(04)

2014年から2019年にかけて、須藤めぐみがODを起こしたのに続いて離婚に至ったこと、昌行を通して垣間見えた「政治と宗教」の問題、そしてコロナ禍と、深刻な存立の危機が次々に「しずく」を襲った。しかしそれらを、再結束の契機として捉え返すことを常に訴…

創作「見えない隣人~新・熾火:第三話」(03)

当時の夫・斉木和正と共に神奈川へ転居してきた千々和雅実は、フリースクール「ステップ」に職を得た。既に在職していた中井由紀江と、雅美はすぐに打ち解けた間柄となった。2004年、うつ病を悪化させた和正の自殺企図をきっかけに、雅実は精神衛生に強く関…