創作シリーズ「熾火」

敗れざる者の胸奥に灯る《いのち》の灯り――。

2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

創作「熾火Ⅲ」(07)

こんにちは。連続創作「熾火Ⅲ」の(07)をお届けいたします。震災後、躁と鬱の波に襲われた昌行ですが、復調して「読書会」がしたいと申し出をしています。 ◇ ◇ ◇ 読書会を始めたいという昌行の発案は、さしあたっては「しずく」とは独立した形で実施すると…

創作「熾火Ⅲ」(06)

こんにちは。連続創作「熾火Ⅲ」の(06)をお届けいたします。震災後の昌行と、当事者会「しずく」について、もう少し書き進めていきます。 ◇ ◇ ◇ 《ミューズ》こと、須藤めぐみが「しずく」に参加して、2か月が過ぎた。今は盛夏である。昌行は、なおも地域生…

創作「熾火Ⅲ」(05)

こんにちは。連続創作「熾火Ⅲ」の(05)をお届けいたします。自分の誕生日と震災の日とが重なって、昌行は一時体調不良を訴えるようになりました。一方、当事者会の「しずく」は活動を継続していました。 ◇ ◇ ◇ 「震災から3か月経ちましたが、いろんな問題を…

創作「熾火Ⅲ」(04)

こんにちは。連続創作「熾火Ⅲ」の(04)をお届けいたします。今さらではありますが、作中の人物や設定は、全て架空のものであって、実在するものとは一切関係ありません。どうぞお含みおきください。 ◇ ◇ ◇ 順調に見えていた昌行の地域生活支援センターへの…

創作「熾火Ⅲ」(03)

こんにちは。連続創作「熾火Ⅲ」の(03)をお届けします。雅実たちは昌行の部屋で誕生日を祝います。しかし――。 ◇ ◇ ◇ グラスが倒れて飲み物がこぼれた。書架の上から空の段ボールが落ち、ガスも止まってしまった。東京でこんな揺れがあったという記憶は、昌…

創作「熾火Ⅲ」(02)

こんにちは。連続創作「熾火Ⅲ」の(02)をお届けいたします。昌行の誕生日である3月11日、雅実は昌行の部屋を訪ねることになりました。しかし――。 ◇ ◇ ◇ 「今日はどんなプログラムだったの」 「アンガー・マネジメントの初歩について。怒りを抑えることが、…

創作「熾火Ⅲ」(01)

今回から、連続創作「熾火Ⅲ」本編をお届けできることとなりました。本当にありがとうございます。今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。 ◇ ◇ ◇ 2011年2月、千々和雅実は新卒時の勤務先での上司・高木陽子の娘・美恵子の結婚式に出席するため、長崎に…

ごあいさつ(旧固定記事)

こんにちは。 当ブログでは、23/08/05以降、連続創作として「熾火」「熾火Ⅱ」「熾火Ⅲ」の3部作(となる予定)を掲載しています。1記事約1000文字というのは、おおよそ新聞に連載される小説の分量に相当するようです。 23/09/19現在では、概ね35回程度の「連…

創作「熾火Ⅲ」プロローグ

こんにちは。連続創作「熾火」シリーズは、いよいよ完結編として予定している「熾火Ⅲ」に入りました。うつ病を患い、福祉のサポートを受けている谷中昌行に、千々和雅実という理解者が現れます。2人は協力して「当事者会」の設立に動きました。 ◇ ◇ ◇ 2010年…

創作「熾火Ⅱ」あとがき

あとがき プロローグ+全13話で、「熾火Ⅱ」を一旦完結させることができました。ご講読くださった方々のご指導の賜物と感謝しています。ありがとうございました。ほどなく、完結編としての「熾火Ⅲ」をスタートさせる予定でおりますので、変わらぬご支援をいた…

創作「熾火Ⅱ」エピローグ

こんにちは。連続創作「熾火Ⅱ」は、この「エピローグ」で一応終結します。次回は「あとがき」を配信し、その後「熾火Ⅲ」を開始いたします。どうぞよろしくお願いいたします。 ◇ ◇ ◇ 2010年の年末、慌ただしく過ごしていた雅実の元に、一通の手紙が届いた。そ…

創作「熾火Ⅱ」(13)

こんにちは。連続創作「熾火Ⅱ」の(13)をお届けいたします。雅実たちは、精神疾患罹患者たちによる「当事者会」設立に向けて動き始めていました。 ◇ ◇ ◇ 2010年の梅雨の頃、雅実たちによる当事者会の設立が10月と決まった。この会は、対面で開催するだけで…

執筆「中」記事⑤ 50記事を目前に

こんにちは。今回はトータルで50記事目を目前としていることにちなんだ「中間報告」をさせていただきます。日頃のご支援、ご指導には心から感謝しています。本当にありがとうございます。 さて、連続創作「熾火」「熾火Ⅱ」を中心としたこのブログは、この記…

創作「熾火Ⅱ」(12)

こんにちは。連続創作「熾火Ⅱ」の(12)をお届けいたします。雅実は誕生日の返礼として、昌行をコンサートに誘おうとしています。 ◇ ◇ ◇ 「あのね。谷中さんは、クラシックお聴きになりますよね」 「ええ、もっぱらCDですけど、よく聴いてますよ」 「コンサ…

創作「熾火Ⅱ」(11)

こんにちは。連続創作「熾火Ⅱ」の(11)をお届けいたします。(10)以降、雅実と昌行は、次第に親密さを増していきます。 ◇ ◇ ◇ 「朝はくもっていたけど、晴れてきたね」 2002年に産業カウンセラー養成講座で出会った時と同じコーヒーショップで、昌行と雅実…

創作「熾火Ⅱ」(10)

こんにちは。連続創作「熾火Ⅱ」も10回目となりました。ご支援いただき、ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。さて、ビデオ通話をするようになった2人ですが、雅実からある提案がされていきます。 ◇ ◇ ◇ あなたの力を貸してほしい、…

創作「熾火Ⅱ」(09)

こんにちは。連続創作「熾火Ⅱ」の(09)をお届けします。2009年7月から年末にかけて、雅実と昌行はメールを交わし合っていました。やがて雅実から、ビデオ通話をしないかとの申し出がありました。 ◇ ◇ ◇ 雅実と昌行とは、互いに数回ずつのメールを送り合い、…

創作「熾火Ⅱ」(08)

こんにちは。連続創作「熾火Ⅱ」の(08)をお届けいたします。2009年、昌行と雅実はメールを通じて、再会を果たしています。今回は「その後」を書いています。 * * * Sub:やっぱり、「とにかく」なのかぁ! 雅実です。ご返信ありがとうございました。「ウ…

執筆「中」記④ 閑話休題

こんにちは。 8月5日から「熾火」を16+1回、8月30日から「熾火Ⅱ」を1+7回の、都合25回書いてまいりました(創作メモや「統合版」を除いて)。1回について、だいたい1000文字ほどを書いているので、総計で25000文字ほどを書いた計算になるようです。ここらで…

創作「熾火Ⅱ」(07)

こんにちは。連続創作「熾火Ⅱ」の(07)をお届けします。元同僚から、昌行のものではないかと知らされたブログの主に、雅実はメールを書きました。果たして? * * * Re:おひさしぶりです。 Masamiさま、いえ、私はあなたを千々和雅実さんと確信している…

創作「熾火Ⅱ」(06)

こんにちは。連続創作「熾火Ⅱ」の(06)をお届けします。「熾火」では一度再会した雅実と昌行でしたが、再び2人はすれ違うことになりました。その後で、この2人はどうなっていくのでしょうか? * * * 夫の斉木和正が雅実の元を去った2007年から、早くも2…

創作「熾火Ⅱ」(05)

こんにちは。前回は、「宗門問題」を取り上げて、それが昌行の信仰心を強めていったことを書きました。一方、雅実はどこで何をしているのでしょうか? * * * 桐華大学の後輩で、アルバイト先で昌行と知り合った教員志望の千々和雅実は、1989年3月に卒業し…

創作「熾火Ⅱ」(04)

こんにちは。連続創作「熾火Ⅱ」の(04)をお届けいたします。桐華大学卒業の前後を中心に、前回までは書いてきました。今回は、昌行の信仰上の節目について描きます。 * * * 宗門問題として後に総括されることとなった一連の「事件」は、1990年の年末に端…

創作「熾火Ⅱ」(03)

こんにちは。「熾火Ⅱ」(03)をお届けいたします。中心人物の谷中昌行の若い頃について綴っていた(02)までの続きとなります。ご覧ください。 * * * 桐華大学創立者・川合会長の文明論は1000年を射程とするものであり、大学論は、遠くヨーロッパ中世にそ…

創作「熾火Ⅱ」(02)

こんにちは。「熾火Ⅱ」(01)では、昌行と雅実の2人が出会った経緯について描きました。そのあと2人が偶然、資格試験の講習会場で2002年に再会するまでのことについて書いていきます。 * * * 同じ桐華大学の先輩後輩として、谷中昌行と千々和雅実はアルバ…

執筆「中」記③ 「熾火」の由来について

こんにちは。 今までご説明する機会を見つけられないでいた、「熾火」(おきび)の語義について、今日は書いてみようと思います。 実は「おきび」にはもう一つ、「燠火」という書き方もあります。私が最初に見かけていたのは、こちらの表記であったことがわ…